国境の南を想い、太陽の西へ向かって歩いて行くような日々を生きる大学生の記録。
日々の考えや想い、ときどき写真と陳腐なレビュー。

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「炊飯器こそ、史上最大の発明品だ!」(ricecooker is the best invention ever)


あるとき、そんなことをスペイン人から熱っぽく言われたことがある。

だから僕は、
旅から帰ってきて、これから旅立つ人に、「何か持っていくのにお勧めのものありますか?」と尋ねられると、炊飯器を持って行け!と答えるようにしている。
「炊飯器こそ、史上最大の発明品だ!」とか言って。


まあくだらない嘘は置いておいて、何を持っていくべきかという質問に対して、僕が必ず答えるのが、延長コードだ。タップコードっていうのかな。
大体、世界一周するような人が泊まる見知らぬ人と相部屋をする必要があるホステルでは、
コンセントの数が少なく、スマホデジカメタブレットipodウォークマン果てはパソコンまで、デジタル製品が必携の時代に、コンセントはいくつあっても足りないぐらいだ。
しかも、ホステルでは自分のベッドとコンセントの距離が遠く、夜寝ている間の充電は、盗難のリスクも高める。僕はそんな盗難リスクがどうだなんて考えずに延長コードをバックパックに詰めたんだけど、まあとにかく、延長コードを持っていくことを必ずおすすめしている。
これは本当の話。


話は少し変わるけど、
中東、ヨーロッパ、そして特に南米あたりだと(アフリカもかな?)圧倒的に自炊をする機会が多い。宿によっては、シェア飯とかいって、何人かで1つ巨大なごはん(カレーとか)を作って、みんなで分けて食べておいしさ8割マシ!思い出もマシマシ!!みたいなこともある。僕みたいなボッチバックパッカーにはあまり縁がなかったんだけど。そういう「シェア飯」の機会には2~3回ほどは恵まれたが、その2~3回を除いて、なんかめんどくさそうだからその輪に加わらなかった。急造の仲良しの輪の中で、ニコニコしている自分を想像すると耐えられなかったから。てへ。でもその2~3回は楽しかった。常にシェア飯~みたいなのはごめんだ。そのぐらいでちょうど良い。

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僕レベルのデブになると、食材はスーパーで買うものというよりも、持ち歩くものになる。
にんにく、パスタ、米、それと塩やコンソメをはじめとしたいくつかの調味料は常に切らさず持ち歩いていた。ご夫婦で周ってる人とかで、食材持ち歩いている方が多かったように思う。

とはいえ、自炊のメニューは大体限られてくる。たまにクックパッドなんか見て新しい料理に挑戦してみようと思うのだけど、大体一度限りのお付き合いで、レパートリーに入ることは少ない。これは世界一周中でも日常でも同じ。
そして、自炊バックパッカー(「自称バックパッカー」ではない。同じくらい怪しいが「自炊バックパッカー」である)たちが共通して抱えている悩みというか欲望がある、と僕は思う。
それは、いかにして和食っぽいものを作るかという悩みであり、欲望だ。 

海外で現地の料理食べておいしい!キラッ☆
おなか壊すのは怖いけどローカル屋台の料理たべてみた~い☆
みたいなのは、大体旅を始めて3か月ぐらいが限度。僕の場合はね。 もちろん、その土地土地で、食べるものは食べていたけど、あくまでもメインは自炊。節約のためにもね。

海外とはいえど、いまや和食はいくらでも食べられる。チャイナやコリアレストランの数にはさすがに及ばないが、どこの大陸にも、どこの国でも、和食屋さんは結構目にする。日本人がやってる優しい味のお店もあれば、ベトナム人とか中国人がニヤニヤヒヤヒヤしながらやってる店もある。 
たが、いかんせんどこも高い。味はもちろんおいしいのだけれど、値段もジャパンクオリティー、ジャパンプライドなわけ。 だから、僕のような貧乏デブバックパッカーはそういう和食の店を指くわえながら見てる。中から出てくる現地に駐在してます風のさわやかな商社マン風の男や、大手メーカー勤務風の男たちを見ては、呪詛の言葉を40秒ぐらい一心不乱に唱える。

話が脇道に逸れたが、つまり自炊で出来る限り和食を再現しようとするのだよ、ワレワレ自炊人は。そんな海外行ってまで和食にこだわるとか勿体ないとかナンセンスとか思いたいなら思うがいい。いや思ってください。いや思わせてください。でも哀しいかな人間理想だけでは生きていけないのです。理想が人を突き動かすのは事実ではある。
旅に必携とお勧めしている延長コードからここまで話が伸びてきたのは、その和食を再現するために、こういってよければ和食っぽいもの作るためにはどうすればいいか、そのための調味料というかアイテムが3つある。そのことに、僕は旅を経て気付いた。その、言うならばバックパッカー和食錬金術3種の神器を、僕は炊飯器と一緒に持っていくようにおすすめしているのだ。和食錬金術っていろいろ崩壊してる。ニュアンスは伝わるよね。

まず1つ目、ほんだし。これがあれば、もうほとんどOK。大体事足りる。
ごはんにほんだしかけて食べれば、それだけで和食。お湯にほんだしを溶いてすすれば、それだけで和食。ゆでたパスタにほんだしかけて食べれば、それだけで和風バスタ。ね、簡単でしょ?

そして次、2つ目は醤油。
理由は言うまでもない。ただ、一点容器については注意せねばならない。ボトルで持ち歩いてはならない。刺身とかについてる「おさかな醤油さし」みたいなやつに小分けにするとベスト。なぜなら、こんなことがあったからだ。
ロンドンで僕は意気揚々と醤油とみりんのボトルを買って、残りのヨーロッパ滞在は和食無双で無限スター状態のはずだった。ホステルのキッチンで和食のにおいをぷんぷんさせて、ホステル中のヘルシー志向和食大好きヨーロピアン女子を一人残らず虜にする予定だった。だけど、やられた。やられたんだよ。空港のゲートでバックパッカーを待ち構える、憎き、荷物検査空港オフィサーに。
まあバレないだろう、とか思って、機内持ち込みの荷物に、ロンドンで買った醤油とみりんのボトルを、隠しておいた。そしたら、案の定見つけてくんの。あいつら。空港のオフィサーが。半端ないって、大迫半端ないって!ぐらいの勢いで僕は焦った。



このボトルはなんだ?」とか言われながら、パスポートの提示を求められる。
僕が髪の毛もじゃもじゃな、怪しい見た目をしていたから訝しんだのだろう。
でも、パスポート見てオフィサーの顔色がどんどん悪くなるわけ。で、それ見て僕も心配だからどしたんすかー?みたいに尋ねる。
するとオフィサーもびびっちゃって、でもビビりながら聞いてくるわけ。

オフィサー「お、お前、日本人か?」

おしゃべり福田「そうだけど、何か?」

オフィサー「こ、この2種類の液体はなんだ?」

根暗デブ福田「みりんと醤油。みりんは馴染みがないかもしれないけど、酒と砂糖の混合。醤油は知ってるっしょ?ソイソース。どっちも和食作るのに大切なの」

オフィサー「嘘をつくんじゃない!!」

メガネ福田「え?・・・・いやほんとだけど・・・・」


オフィサー「お、お前はこの液体を、あの昔日本で起きた事件みたいに、地下鉄や空港で撒くつもりなんだろ!!!!!!!!!」
















な、なんだってーーーーーーーーー\(^o^)/



空港オフィサーは僕が見た目が怪しい日本人+怪しい液体というところから、僕がサリン的な液体を持っているのではないかと疑ってかかってきたわけ。これにはまいった。その発想はなかった。クリエティブテスト合格。書き方から不謹慎な印象を受ける方がいるかもしれないけど、ほんとにこんなこと言い出すオフィサーが居た。
まいったと思っていたら、実はそのオフィサーもネタ的な感じで言っていたことが判明。なんかいつのまにかサムラーイ)^o^(みたいなこと言ってたから、全力でスルー。笑顔でボトル捨ててゲート通過した。ちなみにそのオフィサーはイタリア人。サムラーイ)^o^(
だから、醤油はボトルで持つのがベストだけど、持つとこういう目に合うからやめとけ、って話ね。おさかなちゃんにぶちこんどけって話。

そして最後、ほんだし、醤油ときて、3つめは七味。
僕は七味狂いなので、これがあると一気に和食感が出る。チリパウダー は海外でもよく売ってるんだけど、僕は七味ぐらい粒感があるのが好きなので。

あとは、必要に応じてカレーのルウを買ってたな。ジャワカレーとかよく買ってた。


さっき少し書いたけど、ホステルで料理してると大体男女かかわらず、何作ってんの?みたいな感じで声かけてくるやつがいる。
そういうやつに、和食っぽいもの作ってると伝えると大体ワーオ!出来たらぜひトライさせてくれよな!みたいな感じになる。だいたいうざい。そして分けてあげた時の反応は2通りある。
まず、1つ目は良い反応。You know how to cook!とかJapan is amazingとか言ってほめてくれる。それが言いたかっただけだろお前。まあ、褒められて悪い気はしないけどね。嬉しくてどんどん太っちゃう。
2つ目は、悪い反応。唇を震わせながら、ジュウウウウみたいな声を出す。jeewwwwwみたいな感じ。ちょっと僕には合わないみたいだよハハッとか言って気まずそうにその場を立ち去る。僕は黙々と食べる。
そんな2通りの反応。当たり前か。


そんな感じで、
世界一周中の自炊はもう日常茶飯事だったから取り立てて思い出すことはないんだけど、
1つ、強く印象に残っている自炊がある。

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スペインの巡礼路を歩いていた時の話。
その時、大学の同期のホシノという男とともに、日々20キロ30キロ歩いてストレスもたまっていた。ドカッとカレーが食いたいよね、と日々悶々としながら2人で話していた。 
しかしその時、米は持っていたが、カレールウなど持っていなかった。なにせ、巡礼路沿いの村は、少ないところだと6人とかしか村人がいないレベル。そんなところでカレーが食えるか?ここはインドか?もっといえば品ぞろえの悪い食糧品屋さん雑貨屋さんすら、夕方の6時には閉まる。 ここはインドか?そんなときに、救いとも思える魔法のアイテムが食料品バックの中に眠っていたのを僕は発見した。カレースパイスだった。ここはインドか?
決して、ルウではない。鶏肉にカレーの風味つけたり、カレーピラフっぽいものを作るものだと思ってもらえればよい。

それを使って、僕らはなんとかカレーを作ろうと決心した。
材料はジャガイモ、ニンジン、玉ねぎ、ヨーグルト、リンゴ、牛肉、ニンニク、そしてカレースパイスだ。結果的に、見た目はあれ(ウンコ)だったけど、すごくおいしいカレーができた。あの時はうれしかった。たしか雨が降っていた。弱い雨だった。宿の机がいっぱいだったから、雨だったけど外で食べた。自分たちが濡れることよりもカレーが濡れることを心配してしまうくらい、僕らはそのカレーに愛情を持って接した。そして食べた。このカレーの味が忘れられなくて、僕は帰国してからココイチばっかり行ってるのかもしれない。松屋吉野家すき屋という主要牛丼屋さんに行っても、すーぐ温泉卵付のカレーを頼んじゃうのは、この時の経験があるからだろう。ここはインドか?

味はもちろんなんだけど、
このカレー作りが忘れられないのには、2つ別の理由がある。
まず、米を炊いていた時のことだ。もうその時には鍋でご飯を炊くなんて、にちじょうちゃめしごと、つまり日常茶飯事でお茶の子さいさいって感じだった。"ricecooker is the best invention ever"、だと?どこのどいつがそんな甘いこと言ってるんだ。表に出ろ!放課後は体育館裏な!顔を貸せこのガキぃ!!!!って感じだ。
で、鍋でごはんを炊くのに慣れていた僕らは、おこげでも作ろうぜって言って、あえて長い時間鍋を火にかけた。すると、たちまちおこげ臭がキッチンに広がり、そしてその臭いはとどまることなく宿中に広がる。狙い通りの臭いに満足する僕らの後ろでは、ヨーロピアンたちがいぶかしそうに、そしてくさそうにしている。そしてある男がたまらず言い出すのだ。「ねえ、鍋の中身、焦げてるよ」って。
すると僕らは口を開くのだ。誇らしそうに。「このこげがうまいんだよ」、とか伝えるために。
それを聞いたヨーロピアンおじちゃん、苦笑い。そんで、hahaha japanese is crazy.とか言うわけ。参っちゃう。もうぼくまいっちゃーう。ジュウウウウ。なんかさ、もう英語使うときにさ、困ったらcrazyとかamazingとかawesomeって言っとけばいい感じあるよね。そう強く思った瞬間だった。だから、僕が言う事に困って、haha it's so crazyとかawesomeとか、greatとか言っちゃうとき、この時のことを思い出して、うえええええ自分どうしようもねえとか思ってる。もう次に新しい言語やる機会があった時は、意識的にこういったすぐに口走っちゃう系の言葉は覚えないことにする。個人的に英語以外に馴染みのあるスペイン語もフランス語の語彙で、もっとも使用頻度が多いのは、no lo seとje ne sais pasとかだろう。どちらも英語のI don't knowに相当するフレーズだ。情けないったらもう。

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さらにもう1つ。
カレーを作っているときに、宿に泊まっていたおじいさんからパン余ったんだけど食べない?と声をかけられた。僕らは今カレーを作っているから大丈夫ですよ、親切に有難うございます。と丁重に答えた。
すると、おじいさんも残ったパンを放置しておくわけにもいかないから、ニコっと笑って、「この辺には鳥がたくさんいるんだ」と言って2階のキッチンの窓から、そのパンをちぎって外に投げ始めた。paloma paloma(パロマ、パロマ)とか言って。palomaはスペイン語でハトっていう意味。「ハトや~ハト~餌をお食べ~」ぐらいのニュアンス。ハトなんていたっけ?とホシノと無言で目を合わせて、僕らはカレー作りを続けた。
そして、すでに書いたように、宿のキッチンがいっぱいで座るところがなかったので、僕とホシノは弱々しい雨が降りしきる外の机で、カレーを食べていた。そして食べながら、僕らが目にしたのは、おじいちゃんが投げた、パンだった。「ハトや~ハト~餌をお食べ~」と嬉しそうに言いながら、ちぎったパンを外に投げていたおじいさん。そのパンは、雨でしっとり、というかぐっちょりとして、アスファルトにこびりついていた。
確かにそこに、鳥はいた。あれは、あるいはハトだったのかもしれない。しかし、水分を含んで、この地球という惑星が発する重力を余すところなく帯びたべっちょりちぎりパンは、ハトたちの興味をまったく引いていないようだった。中には、食欲に駆られて果敢に食べようとしたものもいたが、水でびちゃびちゃで、なかなか口に運べず、結局はあきらめていた。
ハトや~ハト~餌をお食べ~」というおじいちゃんの笑顔が胸に刺さった。辛い現実から目をそらすために、無心で口もきかず、僕らはカレーを食べた。だから僕はこれからもカレーを食べ続けるだろう。


と、まあくだらないことを長々と書いてしまった。
こんなことを僕の頭の中をよぎったのには理由がある。
いま、昼食に煮込みうどんを作ろうと思って、鰹節でだしを取っていた。その鰹節は、鰹節といったけどイワシとカツオ節のミックス。しかも厚削節。愛媛産。とってもおいしいの。
で、だしを煮出している間に、ニンジンでも切っておこうと思って、ふと、ピーラー(皮むき器)に手を伸ばした。で、ニンジンの皮をむこうとするわけ。そしたら、剥けない。全然剥けない。
あっ!んああーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!
その瞬間思いだした。そう、海外のホステルで自炊をするとき、野菜の皮をむくが本当に大変だった。包丁で剥けるほど器用じゃないし、なんとか備え付けのピーラーで剥こうとする。でも全然ダメ。もう野菜剥くだけで料理を終わりにしたいぐらいのレベル。まあ剥いてたんだけど。
だから、日本ではピーラーにまじでお世話になってたよなーという感謝の気持ちが一つ、そしてこの先の旅路でどこかでピーラー売ってるの見たら、絶対自分の買おうと悶々していたことを思い出したのがもう一つ。


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で、ある日見つけたの。ピーラーが売ってるのを。百円ぐらいで。イスラエルの首都エルサレムの路上で。しかもパッケージは日本語。ダイソー。
これはシメた、お世話になってたピーラー。今後もう野菜の皮むきで苦しむこともない、野菜の皮むきだけでげっそりしていた自分におさらばだ!神のご加護!って感じだった。

しかし、結局のそのピーラーは一度も使われることはなかった。なぜなら、イスラエルのあとに向かったアジアの国々のホステルにはほとんどキッチンがなければ、バックパッカーたちの間に自炊の文化もほとんどなかったからだ。

だから、僕は今日、皮がむけなかった瞬間に、本当に申し訳ない気持ちになった。
世界一周に持っていくべきものは何ですか?その答えに、延長コードはマスト、荷物の余裕があれば炊飯器もオススメ、和食っぽいもの作りたければほんだし、醤油、七味がいい、お供を付けるならカレー作りが上手いインド人だといつも笑顔で答えていた。
でも忘れていた。忘れていたんだよ。ピーラーを。絶対に持って行け。ピーラーを。皮剥けねえんだよ。備え付けのやつじゃ。そう伝えるのを忘れていた。参った。だから、申し訳ないのだ。自炊を志した同志たちに、僕はなんてことをしてしまったんだと。

そんなことをニンジンの皮をむきながら、思った。
で、ニンジンを切るのを放置してこれを書いている。もう居てもたってもいられなかった。たしか、ニンジンを切っていたのは1時間半前である。ニンジンへにょへにょ、煮出した鰹節も萎え萎え。伸縮自在。
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私のお昼ご飯はいずこに。ふぇええ~。これが本日の私のレ・ミゼラブル。ああ無情。

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どうもフクダと申します。
「おしゃべり根暗でぶめがね」です。

雑で適当。
自分勝手で薄情な恩知らず。
中途半端に凝り性で、
中途半端なこだわりをもってます。
どう仕様もない無知と偏見を以て、
へらへらと世界を眺めてます。

苦手なこと:服のサイズ選び
得意なこと:暴飲暴食、ダイエット宣言

2011年12月25日より、
色々なご縁に与り、
世界中をうにょうにょお散歩して参ります。
地球上の皆さま、ご迷惑をおかけします。
ご注意ください。

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